ネヘミヤ記3章

Loading

 今回は、ネヘミヤ記3章から学びます。

 Ⅰ.その傍らで(1-12)

まず、1~2をご覧ください。「3:1 こうして大祭司エルヤシブは、その仲間の祭司たちと、羊の門の再建に取りかかった。彼らはそれを聖別して、扉を取り付けた。そしてメアのやぐらのところまで聖別し、ハナンエルのやぐらにまで及んだ。3:2 その傍らではエリコの人々が建て、その傍らではイムリの子ザクルが建てた。」

いよいよ城壁の修復工事が始まります。どのように始められたのかというと、大祭司エルヤシブとその仲間の祭司たちによって、羊の門の再建に取りかかることによってです。大祭司エルヤシブは、神殿再建のリーダーであった大祭司ヨシュアの孫にあたります(ネヘミヤ12:10)。城壁の再建工事を行った人たちの中で、最初に登場したのは大祭司でした。霊的リーダーは、単なる言葉だけでなく、行動で人々を導く必要があることがわかります。

まず、地図をご覧ください。

聖書巻末の地図「ネヘミヤ時代のエルサレム」より

「羊の門」は、城壁の北東部にあった門で、近くにベテスダの池がありました(ヨハネ5:2)。当時のエルサレムには、12の門と4つのやぐら(塔)がありましたが、ここでは、その内8つの門と2つのやぐらの修復について言及されています。その最初の門は「羊の門」です。この門は、そこを通っていけにえの羊を神殿に運ぶための門でした。ネヘミヤは、こうした祭司たちの関心事に敬意を表しました。それは、礼拝こそ最優先事項であることを示したかったからです。

3~5節をご覧ください。「3:3 魚の門はセナアの子らが建てた。彼らは梁を置き、扉、錠、かんぬきを取り付けた。3:4 彼らの傍らではハ・コツの子ウリヤの子であるメレモテが修復を行い、その傍らではメシェザブエルの子ベレクヤの子であるメシュラムが修復を行い、その傍らではバアナの子ツァドクが修復を行った。3:5 その傍らではテコア人たちが修復を行ったが、彼らの貴族たちはその上役に頭を下げることはなく、工事に協力しなかった。」

次は、「魚の門」です。これはセナアの子らが建てました。「魚の門」は、その名のごとく、そこから魚が運び込まれたことから付けられた名称でしょう。ネヘミヤ13:16を見ると、ツロの人々はエルサレムに魚などを運び込み、販売していたことがわかります。

彼らの傍らでは、ハ・コツの子エリヤの子であるメレモテが修復を行っていました。メレモテは祭司です(エズラ8:33)。彼は、ここ以外に別の工事も担当しています(20)。また、その傍らではメシェザブエルの子ベレクヤの子であるメシュラムが修理を行っていました。メシュラムもまた、ここ以外にも別の工事を担当しています(30)。その傍らではバアナの子ツァドクが修復を行いました。また、その傍らでは、テコア人たちが修復を行いましたが、彼らの貴族たちはその上役に頭を下げることはなく、工事に協力しませんでした。テコアは、エルサレムの南約20キロにある町で、預言者アモスの故郷です。テコアの貴族たちは工事に協力しなかったのです。一般の人たちだけが工事に参加しました。彼らは、東の壁の修復工事にも参加しています。

ここで注目すべきことは「その傍らでは」という言葉です。これは7~12節にも繰り返して出てきます。それは、エルサレムの住民全員がこれに関わったということを示しています。こうした一大プロジェクトには全員参加が求められたのです。それは教会の再建工事も同じです。それはある一部の人たちだけによってなされるものではなく、すべての信者が関わることによって成し遂げられます。キリストのみからだなる教会が正常に機能するためには、それぞれの部分が有機的に機能する必要があるのです(Ⅰコリント12:12-27)。自分に与えられている時間、賜物、財などを、御国の建設の一大プロジェクトのために、神に用いていただくよう喜んで自分をささげていきたいと思います。

次に、6~12節をご覧ください。「3:6 エシャナの門はパセアハの子エホヤダと、ベソデヤの子メシュラムが修復を行った。彼らは梁を置き、扉、錠、かんぬきを取り付けた。3:7 彼らの傍らでは、ギブオン人メラテヤ、メロノテ人ヤドン、それにユーフラテス川西方の総督の管轄に属する、ギブオンとミツパの人々が修復を行った。3:8 その傍らでは金細工人のハルハヤの子ウジエルが修復を行い、その傍らでは香料作りの一人ハナンヤが修復を行った。こうして、彼らはエルサレムを、幅広の城壁のところまで修復した。3:9 その傍らでは、エルサレム地区の半区の長、フルの子レファヤが修復を行った。3:10 その傍らではハルマフの子エダヤが自分の家のそばの部分を修復し、その傍らではハシャブネヤの子ハトシュが修復を行った。3:11 その続きの部分は、ハリムの子マルキヤと、パハテ・モアブの子ハシュブが、炉のやぐらと一緒に修復した。3:12 その傍らでは、エルサレム地区の残りの半区の長、ハ・ロヘシュの子シャルムが、自分の娘たちと一緒に修復を行った。」

次に修復を行ったのは「エシャナの門」(ミシュネの門)です。これはパセアハの子エホヤダと、ベソデヤの子メシュラムによって行われました。「エシャナの門」は、「古い門」とも呼ばれていて、「魚の門」の南側に位置していました。つまり、「羊の門」から始まった再建工事は、時計回りとは逆の方向に展開していったということです。

8節を見ると、この工事には金細工人のウジエルや、香料作りの一人ハナンヤも参加していたことがわかります。彼らはエルサレムを、幅広い城壁のところまで修復しました。金細工人は、大きな石の扱いには慣れていませんでしたが、そういう彼らも肉体労働を行いました。それは香料作りにも言えることで、彼らもまた、慣れない重労働に参加したのです。

9節には「半区の長」レファイヤについての言及がありますが、この半区の長がどういう地位にあったのかは詳しくはかりませんが、高級官僚だったのではないかと考えられています。そういう人たちも工事に参加しました。

神は、金細工人のことも、香料作りのことも、半区の長のことも、そして娘たちのことも覚えておられます。神のために犠牲を惜しまなかった人を、神は覚えておられておられるのです。

Ⅱ.糞の門(13-14)

13~14節をご覧ください。「3:13 谷の門はハヌンと、ザノアハの住民が修復を行った。彼らはそれを建て直し、扉、錠、かんぬきを取り付け、糞の門までの城壁千キュビトを修復した。3:14 糞の門はベテ・ハ・ケレム地区の長、レカブの子マルキヤが修復した。彼はそれを建て直し、扉、錠、かんぬきを取り付けた。」

次は、「谷の門」と「糞の門」です。「谷の門」は南側の壁に設置されていました。2:13で見たように、ネヘミヤはこの場所から夜間の調査を行い、ここに戻って来ました。

「糞の門」は、南にあるヒノムの谷に汚物を運び出すために設置された門なので、このような名称が付けられたのでしょう。この門は、町の衛生状態を保つために必要なものでした。これは私たちにも言えることです。私たちも霊的汚物(罪)を運び出し、常に衛生状態を保たなければならないからです。そのためには私たちの心に「糞の門」を取り付ける必要があります。日々の祈りの中で神に対して罪を言い表し、それを心の外に運び出さなければならないのです。もし、私たちが自分の罪を言い表すなら、神は真実で正しい方ですから、その罪を赦し、すべての悪から私たちをきよめてくださいますから(Ⅰヨハネ1:9)。

Ⅲ.その向こうでは(15-32)

次に、15~32節をご覧ください。まず15~16節までをお読みします。「3:15 泉の門はミツパ地区の長、コル・ホゼの子シャルンが修復した。彼はそれを建て直し、屋根を付け、扉、錠、かんぬきを取り付けた。また、王の園のシェラフの池の城壁を、ダビデの町から下って来る階段のところまで修復した。3:16 その向こうでは、ベテ・ツル地区の半区の長、アズブクの子ネヘミヤが、ダビデの墓地のそばまでと、人工貯水池までと、勇士たちの家のところまでを修復した。」

次は「泉の門」です。「泉の門」は、「糞の門」の北東に位置していました。その門は、「シロアムの池」に向かう門でした。というのは、そこにはギホンの泉からの湧水がトンネルを通って流れていたからです。この門が「泉の門」と呼ばれていたのはそれ故でしょう。16節には「ダビデの墓地」とありますが、それもこの門のから入ったところにありました。また「人工貯水池」とは、2:14にあった「王の池」のことだと思われます。

ここでのポイントは、「その向こうでは」という言葉です。この言葉も何回も繰り返して出てきます。これは新改訳第三版では「そのあとに」、口語訳でも「その後に」、新共同訳では「続いて」と訳されているように、その次にどうなったのかを示している言葉です。それが次から次に出てくるのは、次から次に再建工事が進められていったことを表しているからです。

17~18節をご覧ください。「3:17 その向こうでは、バニの子レフムなどレビ人たちが修復を行った。その傍らでは、ケイラ地区の半区の長、ハシャブヤが自分の地区のために修復を行った。3:18 その向こうでは、ケイラの残りの半区の長、ヘナダデの子バワイなど、彼らの同僚たちが修復を行った。」

この部分の修復を行ったのは、バニの子レフムなどレビ人たちです。なぜこの部分を修復したのが祭司やレビ人だったのかというと、ここが神殿に近い所にあったからです。

次に、19~20節をご覧ください。「3:19 その傍らでは、ミツパの長、ヨシュアの子エゼルが、城壁の曲がり角の隅にある武器倉に向かう上り坂のそばで、続きの部分を修復した。3:20 その向こうでは、ザカイの子バルクが続きの部分を、城壁の曲がり角から大祭司エルヤシブの家の門のところまで熱心に修復した。」

その次は、ミツパの長、ヨシュアの子エゼルが、城壁の曲がり角の隅にある武器倉に向かう上り坂のそばで、続きの部分を修復しました。その向こうでは、ザカイの子バルクが続きの部分を、城壁の曲がり角から大祭司エルヤシブの家の門のところまで熱心に修復しました。

21~24節をご覧ください。「3:21 その向こうでは、ハ・コツの子ウリヤの子メレモテが続きの部分を、エルヤシブの家の門からエルヤシブの家の端まで、修復を行った。3:22 その向こうでは、低地の人々である祭司たちが修復を行った。3:23 その向こうでは、ベニヤミンとハシュブが自分たちの家のそばの部分を修復した。その向こうでは、アナネヤの子マアセヤの子アザルヤが自分の家の近くを修復した。3:24 その向こうでは、ヘナダデの子ビヌイが続きの部分を、アザルヤの家から城壁の曲がり角の隅まで修復した。」

ハ・コツの子ウリヤの子メレモテの名前が出てくるのは2回目です。彼は4節でも魚の門の修復工事に関わっていまから、今回が2回目となります。彼は2箇所の修復工事に参加したのです。ここでも、その修復工事の範囲を記すのに、個人の家が用いられています。「エルヤシブの家」と「ベニヤミンとハシュブの家」、「アザルヤの家」です。

25~27節には、門や城壁だけでなくやぐらの修復も行ったことが記されてあります。「3:25 ウザイの子パラルは、城壁の曲がり角の部分と、監視の庭のそばにあって上の王宮から突き出ているやぐらを修復した。その向こうでは、パルオシュの子ペダヤと、3:26 オフェルに住む宮のしもべたちが、東の方の水の門と突き出ているやぐらのそばの部分までを修復した。3:27 その向こうでは、テコア人が、突き出ている大きなやぐらのそばからオフェルの城壁までの続きの部分を修復した。」

ウザイの子パラルは、城壁の曲がり角の部分と、監視の庭のそばにあって上の王宮から突き出ているやぐらを修復しました。これは、これはソロモンが建てた王宮でしょう。そこから出ていたやぐらを修復したのです。

また、オフェルに住む宮のしもべたちが、東の方の水の門と突き出ているやぐらのそばの部分までを修復しました。オフェルとは、ダビデの町と神殿の丘の間にあった地域です。

次に、28~29節をご覧ください。「3:28 馬の門から上の方は、祭司たちがそれぞれ自分の家のそばの部分を修復した。3:29 その向こうでは、イメルの子ツァドクが自分の家のそばの部分を修復した。その向こうでは、シェカンヤの子、東の門を守る者シェマヤが修復を行った。」

馬の門から上の方は、祭司たちがそれぞれ自分の家のそばの部分を修復しました。「馬の門」は、神殿があった領域から東側のケデロンの谷に出るためのものです。この門から馬が出入りし、王宮に向かって行き来したのでこのように名付けられたのでしょう。

「東の門」は東側に出るための門で、現在の「黄金門」の位置に置かれていました。この門は唯一閉ざされている門です。キリストはこの門からエルサレムに入城しました。ユダヤ教では救世主も終末に黄金の門を通り入城するといわれています。それを阻止するためイスラム教徒が門を閉ざしたそうです。

最後に30~32節をご覧ください。「3:30 その向こうでは、シェレムヤの子ハナンヤと、ツァラフの六男ハヌンが、その続きの部分を修復した。その向こうでは、ベレクヤの子メシュラムが自分の部屋のそばの部分を修復した。3:31 その向こうでは、金細工人の一人マルキヤが、召集の門の向かい側にある、宮のしもべたちや商人たちの家のところまでと、角の二階の部屋のところまでを修復した。3:32 角の二階の部屋と羊の門の間は、金細工人と商人たちが修復した。」

金細工人のマルキヤの名前が出てくるのは、これが3度目です(11,14節)。彼は金細工人でしたが、長い区間の城壁の修復工事に携わりました。宮のしもべたちや商人たちも献身的に働きました。最後に「羊の門」が出てきますが、これでエルサレムの城壁を一周したことになります。

エルサレムの住民の老若男女が、身分の区別なしに一つとなって城壁修復工事に参加した結果、この国家的一大プロジェクトはわずか52日で完成したのです。この祝福工事は、すべてのユダヤ人が参加しなければ実現しないものでした。彼らは、それぞれ自分の与えられた賜物を用いて、重労働にもかかわらず従事したのです。それは私たちにも言えることです。私たちもまた、自分に与えられている賜物を用いて神に仕えるように召されています。私たちが神の国の拡大のために自分を捧げていくなら、すばらしい神の御業が成されていくのです。自分に何ができるのかを黙想し、それを神の栄光のために用いていただきましょう。