今回は、Ⅱ列王記11章から学びます。
Ⅰ.ヨアシュの保護(1-3)
場面は南ユダ王国に移ります。アハズヤの母アタルヤは、自分の子が死んだと知ると、ただちに王の一族全員を滅ぼしました。アハズヤは南ユダ王国の王でしたが、戦いで傷を負っていたイスラエルの王ヨラムを見舞うためにイズレエルにやって来ていましたが、彼もまたエフーによって殺されてしまいました。それでアタルヤは、ただちに一族全員を滅ぼしたのです。なぜ彼女はそんなことをしたのでしょうか。自分が南王国ユダを支配する王になるためです。
彼女は、北王国イスラエルの王であったアハブとイゼベルの娘です。彼女は、南王国の王ヨラムと結婚し妻となり数人の子を儲けましたが、ペリシテ人とアラビア人の攻撃を受け、末子アハズヤ(別名エホアハズ)以外は、皆殺されてしまいした(2歴代21:17)。そのアハズヤが殺されたので、彼女が王の実権を握るには一族全員を滅ぼさなければならなかったのです。それにしても一族全員を殺すとはおぞましいことです。彼女がこのような恐ろしいことができたのは、彼女の中に母イゼベルの性質が宿っていたからです。イゼベルはかつてヤハウェの預言者を次々と殺し、もはや主に忠実な者がほとんど残されていないのではないかと思われたほど殺しました。そしてアタルヤもその残虐性を受け継いで、目的のためには手段を選ばない女になっていたのです。
しかし、ヨラム王の娘で、アハズヤの姉妹のエホシェバは、殺される王の子たちの中からアハズヤの子ヨアシュをこっそり連れ出し、寝具をしまう小部屋にその子とその乳母を入れました。エホシェバは、ヨラム王の娘で、死んだアハズヤの腹違いの姉妹です。彼女は、アタルヤが殺そうとした孫たちの中からヨアシュを盗み出し、寝具をしまう小部屋に隠したのです。この時ヨアシュはわずか1歳でした。こうして彼は乳母とともに、主の宮に六年間、身を隠していました。その間、アタルヤが国を治めていました。彼女は南王国で唯一の女王であり、ダビデの家系ではない唯一の王です。もし、アタルヤがヨアシュを殺していたら、ダビデの家系は完全に途絶えてしまい、メシヤ誕生の約束が挫折するところでした。しかし、神はそれをお許しになりませんでした。
このように神の働きが失敗し、悪魔が勝利しているように見えるときがありますが、決してそんなことはありません。主は必ずご自分のみこころを成就するために、一人の赤ん坊を守られたように守ってくださいます。アタルヤは悪魔の手先ですが、神はそんな敵の攻撃からヨアシュを守り、悪魔の策略を砕かれたのです。
Ⅱ.祭司エホヤダの計画(4-16)
次に、4~8節をご覧ください。「11:4 七年目に、エホヤダは人を遣わして、カリ人と近衛兵それぞれの百人隊の長たちを【主】の宮の自分のもとに来させ、彼らと契約を結んで【主】の宮で彼らに誓いを立てさせ、彼らに王の子を見せた。11:5 彼は命じた。「あなたがたのなすべきことはこうだ。あなたがたのうちの三分の一は、安息日に務めに当たり、王宮の護衛の任務につく。11:6 三分の一はスルの門に、もう三分の一は近衛兵舎の裏の門にいるように。あなたがたは交互に王宮の護衛の任務につく。11:7 あなたがたのうち二組は、みな安息日に務めに当たらない者であるが、【主】の宮で王の護衛の任務につかなければならない。11:8 それぞれ武器を手にして王の周りを囲め。その列を侵す者は殺されなければならない。あなたがたは、王が出るときにも入るときにも、王とともにいなさい。」」
7年目とは、アタルヤの治世の第七年目ということです。祭司エホヤダがヨアシュを王にするために動きます。彼は、ヨアシュが主の宮で隠されていることを知っていました。そして、その時を待っていたのです。彼は密かに人を遣わして、カリ人と近衛兵それぞれの百人隊の長たちを主の宮の自分のもとに来させ、彼らと契約を結んで主の宮で彼らに誓いを立てさせ、彼らに王の子を見せました。つまり、正当な後継者が存在していることを彼らに示したのです。カリ人とは、ケレテ人のことです。彼らはダビデに忠誠を誓った兵士たちです(2サムエル20:23)。彼らは ダビデの子孫が王にならなければいけないことをよく知っていました。彼らはアタルヤにくみしていない忠実な兵士たちでした。ですから、彼らがそのことを聞いた時どれほど喜んだことでしょう。そして、エホヤダは彼らと契約を結び、王位奪還計画を開始するのです。それが5~8節にある内容です。
彼らのうちの三分の一は安息日の務めに当たり、王宮の護衛の任務につきます。三分の一は東のスルの門を固め、残りの三分の一は近衛兵舎の裏の門の護衛に当たります。王宮の護衛は交代制とし、三組の二組は安息日には勤務しないが、主の宮の王子の護衛に当たります。それぞれ武装して王子の身辺警備を厳重にするようにと。これは王の戴冠式に備えるための準備です。
祭司エホヤダの信仰と勇気はすごいですね。彼は個人的な理由でアタルヤを殺害し、ヨアシュを王にしようしたのではありません。彼はあくまでも神のみこころが成就するために動いたのです。つまり彼は主の代理人として、悪魔が送り込んだ強奪者を排除しようとしたのです。彼は信仰により、いのちがけで王位奪還に動き出しました。
9~16をご覧ください。「11:9 百人隊の長たちは、すべて祭司エホヤダが命じたとおりに行った。彼らは、それぞれ自分の部下たちを、安息日に務めに当たる者も、安息日に務めに当たらない者も、祭司エホヤダのところに連れて来た。11:10 祭司は百人隊の長たちに、【主】の宮にあったダビデ王の槍と丸い小盾を与えた。11:11 近衛兵たちはそれぞれ武器を手にして、神殿の右側から神殿の左側まで、祭壇と神殿に向かって王の周りに立った。11:12 エホヤダは王の子を連れ出し、王冠をかぶらせ、さとしの書を渡した。こうして人々は彼を王と宣言し、彼に油を注ぎ、手をたたいて「王様万歳」と叫んだ。11:13 アタルヤは近衛兵と民の声を聞いて、【主】の宮の民のところに行った。11:14 彼女が見ると、なんと、王が定めのとおりに柱のそばに立っていた。王の傍らに隊長たちやラッパ奏者たちがいて、民衆がみな喜んでラッパを吹き鳴らしていた。アタルヤは自分の衣を引き裂き、「謀反だ、謀反だ」と叫んだ。11:15 祭司エホヤダは、部隊を委ねられた百人隊の長たちに命じた。「この女を列の間から連れ出せ。この女に従って来る者は剣で殺せ。」祭司が「この女は【主】の宮で殺されてはならない」と言ったからである。11:16 彼らは彼女を取り押さえた。彼女が馬の出入り口を通って王宮に着くと、彼女はそこで殺された。」
百人隊の長たちは、すべて祭司エホヤダが命じたとおりに行いました。それぞれ自分の部下たちを、安息日に務めに当たる者も、当たらない者も、祭司エホヤダのところに連れてきました。
すると祭司エホヤダは百人隊の長たちに、主の宮にあったダビデ王の槍と丸い小盾を与えました。これらの槍と小盾は国家行事の際に用いられるもので、この戴冠式が正式なものであることを示すものでした。近衛兵たちはそれぞれ武装し、主の宮の正面に向かって王の周りに立って護衛しました。エホヤダは王の子を連れ出し、王冠をかぶらせ、モーセ五書を渡しました。こうして人々は彼を王と宣言し、彼に油を注ぎ、手をたたいて「王様万歳」と叫んだのです。
アタルヤはヨアシュの存在について知りませんでした。彼女は近衛兵と民の声を聞いて、主の宮にいる民のところに行ってみると、なんと、王が立つ定位置にヨアシュが立っているではありませんか。それはヨアシュが新しい王として即位したことを示していました。そして、民が喜んでラッパを吹き鳴らしていました。それを見たアタルヤは自分の衣を引き裂き、「謀反だ、謀反だ」と叫びましたが、だれも彼女に加勢する者はいませんでした。
すると祭司エホヤダは、百人隊の長たちに、彼女を捕らえ、王宮まで連行するように命じました。そして、彼女に従って来るものは剣で殺すようにと命じました。主の宮は礼拝する場所であって、処刑所ではないからです。そこで彼らは彼女を取り押さえ、王宮の馬の門に着くと、彼女はそこで処刑されました。
アタルヤは、栄華の絶頂期の中で突然の死を迎えました。詩篇49篇20節に「人は栄華のうちにあっても悟ることがなければ滅び失せる獣に等しい。」とありますが、たとえどんな栄華の中にあっても悟ることがなければ、それは滅び失せる獣と何ら変わりありません。日々主のみことばを通して悟りが与えられ、主の御前に誠実に歩まなければなりません。
Ⅲ.バアル神殿の破壊(17-21)
最後に、17~21節をご覧ください。「11:17 エホヤダは、【主】と、王および民との間で、彼らが【主】の民となるという契約を結ばせ、王と民との間でも契約を結ばせた。11:18 民衆はみなバアルの神殿に行って、それを打ち壊した。彼らはその祭壇と像を徹底的に打ち砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺した。祭司エホヤダは【主】の宮に管理人を置いた。11:19 彼は百人隊の長たち、カリ人、近衛兵たちと民衆すべてを率いた。彼らは王を【主】の宮から連れて下り、近衛兵の門を通って王宮に入った。王は王の座に着いた。11:20 民衆はみな喜んだ。アタルヤは王宮で剣で殺され、この町は平穏となった。11:21 ヨアシュは七歳で王となった。」
エホヤダは、主と、王および民との間で、彼らが主の民となるという契約を結ばせ、また、王と民との間でも契約を結ばせました。これは、モーセの律法に従って、主の民として生きるという再献身の表明です。また、王はモーセの律法に従って民を統治し、民はその王に従うという内容の契約です。すばらしいですね、私たちは主の所有の民である、主のものであるということを再認識することは。ある時には神様のものだけれども、ある時には自分の好きなようにということではなく、いつでも、どこでも、自分たちは主の民、その牧場の羊であり、そこに立てられた王の統治に従って生きると認識することは大切なことです。
それで民はどうしたかというと、バアルの神殿に行って、それを打ち壊しました。エルサレムになんとバアルの神殿が建っていたのです。これはアタルヤが南王国にバアル礼拝を広げるために建てたたものです。民は、それを打ち壊したのです。そればかりでなく、彼らはその祭壇と像を徹底的に打ち砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺しました。アタルヤによって持ち込まれたバアル礼拝が、この時点で一掃されたのです。そして祭司エホヤダは、バアル礼拝者たちがそこに入らないように主の宮を管理する管理人たちを置きました。エホヤダは百人隊の長たち、カリ人、近衛兵たちと民衆を率いて、王を主の宮から連れ下り、王宮に導きました。そこでヨアシュは王の座に着きました。ヨアシュが7歳の時です。ヨアシュは7歳で王になりました。
一方アタルヤはどうなったかと言うと、彼女は王宮で殺されました。それでこの町は平穏になりました。この町とはエルサレムのことです。エルサレムは再び平穏になりました。アタルヤが南王国にバアル礼拝を持ち込んで以降、エルサレムは霊的混乱が蔓延していましたが、それが解消されたのです。北王国ではイゼベルがバアル礼拝を推進し、南王国ではイゼベルの娘のアタルヤがその役割を果たしました。しかし、南王国は北王国ほどバアル礼拝の影響を受けていませんでした。それはダビデの血筋に属する南王国の王たちの中に主を恐れる者たちが何人かいて、南王国を霊的堕落から守ったからです。私たちも祭司エホヤダに導かれた民を見習って、主の民であるという身分が与えられたことを感謝し、主に喜ばれる歩みを求めていきたいと思います。