Ⅰサムエル記9章

サムエル記第一9章から学びます。

 

Ⅰ.キシュの子サウル(1-10)

 

まず、1~10節までをご覧ください。1-2節をお読みします。

「ベニヤミン人で、その名をキシュという人がいた。キシュはアビエルの子で、アビエルはツェロルの子、ツェロルはベコラテの子、ベコラテはベニヤミン人アフィアハの子であった。彼は有力者であった。キシュには一人の息子がいて、その名をサウルといった。彼は美しい若者で、イスラエル人の中で彼より美しい者はいなかった。彼は民のだれよりも、肩から上だけ高かった。」

 

いよいよ、初代イスラエルの王となる人物が選ばれます。それはサウルです。ここには、サウルがどのような人物であったかが描かれています。

彼はまずベニヤミン人で、キシュという人の一人息子でした。そして彼は、美しい若者であったとあります。その美しさは、イスラエル人の中で彼よりも美しい者はいなかったと称されているほどです。それは彼の背の高さを見てもわかります。彼は民のだれよりも、肩から上だけ高かったのです。女の人たちが一番結婚したいと思う理想の男性、というところでしょうか。神は、イスラエルの民が王として望んでおられるような人物を用意されたのです。

 

3~10節までをご覧ください。

「あるとき、サウルの父キシュの雌ろば数頭がいなくなったので、キシュは息子サウルに言った。「しもべを一人連れて、雌ろばを捜しに行ってくれ。」サウルはエフライムの山地を巡り、シャリシャの地を巡り歩いたが、それらは見つからなかった。さらに、シャアリムの地を巡り歩いたが、いなかった。ベニヤミン人の地を巡り歩いても、見つからなかった。二人がツフの地にやって来たとき、サウルは一緒にいたしもべに言った。「さあ、もう帰ろう。父が雌ろばのことはさておき、私たちのほうを心配し始めるといけないから。」すると、しもべは言った。「ご覧ください。この町には神の人がいます。この人は敬われている人です。この人の言うことはみな、必ず実現します。今そこへ参りましょう。私たちが行く道を教えてくれるかもしれません。」サウルはしもべに言った。「もし行くとすると、その人に何を持って行こうか。私たちの袋には、パンもなくなったし、神の人に持って行く贈り物もない。何かあるか。」しもべは再びサウルに答えた。「ご覧ください。私の手に四分の一シェケルの銀があります。これを神の人に差し上げたら、私たちの行く道を教えてくださるでしょう。」昔イスラエルでは、神のみこころを求めに行く人は「さあ、予見者のところへ行こう」とよく言っていた。今の預言者は、昔は予見者と呼ばれていたからである。サウルはしもべに言った。「それはよい。さあ、行こう。」こうして、彼らは神の人のいる町へ行った。」

 

あるとき、サウルの父キシュの雌ろば数頭がいなくなったので、キシュは息子のサウルに、若い者一人を連れて捜しに行くようにと言いました。それで彼はエフライムの山地からベニヤミンの地を巡り歩きましたが、見つかりませんでした。そして、彼らがツフの地に来たとき、サウルは一緒にいた若い者に、「もう帰ろう。父親が自分たちのことを心配するといけないから」と、言いました。

 

するとそのしもべが言いました。「ご覧ください。この町には神の人がいます。この人は敬われている人です。この人の言うことはみな、必ず実現します。今そこへ参りましょう。私たちが行く道を教えてくれるかもしれません。」(6)

 

「神の人」とはとはもちろんサムエルのことです。当時サムエルは、全イスラエルに神の預言者として認められていました。彼のもとに行けば、自分たちが行くべき道が示されるかもしれないと思ったのです。サウルは、その神の人のところに行くとしたら何かみやげを持って行かなければならないが、果たして何を持っていったら良いだろうかと心配します。するとそのしもべは、自分が持っていた銀4分の1シェケルを差し出しました。当時は、預言者という言葉の代わりに、「予見者」と言う言葉が使われていました。予見者は、助言を求めてやって来る人たちからの捧げ物によって生計を立てていたのです。サウルは、「それは良い」と言い、彼らは神の人がいる町へと行きました。

 

道に迷った時、あなたはだれに助けを求めますか。サウルと若者は、神の人サムエルを訪ねました。これは賢明な判断でした。私たちも人生の方向性が分からなくなったとき、神に尋ね求めましょう。聖書を開き、霊的指導者からみことばを通しての助言を聞きましょう。人にではなく、神に向かうようにしたいものです。

 

Ⅱ.神の不思議な導き(11-21)

 

11~14節をご覧ください。

「彼らがその町への坂道を上って行くと、水を汲みに出て来た娘たちに出会った。彼らは「予見者はここにおられますか」と尋ねた。すると娘たちは答えて言った。「はい。この先におられます。さあ、急いでください。今日、町に来られました。今日、高き所で民のためにいけにえをお献げになりますから。町に入ると、あの方が見つかるでしょう。あの方が食事のために高き所に上られる前に。民は、あの方が来られるまで食事をしません。あの方がいけにえを祝福して、その後で、招かれた者たちが食事をすることになっているからです。今、上って行ってください。あの方は、すぐに見つかるでしょう。」彼らが町へ上って行き、町に入りかかったとき、ちょうどサムエルが、高き所に上ろうとして彼らの方に向かって出て来た。」

 

彼らがその町への坂道を上って行くと、水を汲みに出て来た娘たちに出会ったので、彼らはその娘たちに「予見者はここにおられますか」と尋ねました。すると、娘たちは、この先にいると教えてくれました。その日サムエルは、高きところでいけにえをささげるためにその町に来ていたのです。いけにえをささげた後、サムエルは招かれた者たちと食事をすることになっていたので、いますぐ上って行くようにと教えてくれました。すると、「彼らが町へ上って行き、町に入りかかったとき、ちょうどサムエルが、高き所に上ろうとして彼らの方に向かって出て来た。」のです。何というタイミングでしょう。サウルたちが町に入ったその日、サムエルがいけにえをささげるためにその町に来ていたというだけでなく、ちょうどそのときサムエルが彼らのところにやって来たので、彼らはその町で会うことができたのです。これはまさに神のタイミングでした。神は私たちの見えない所で働いておられ、このように必要な出会いを与えてくださるのです。

 

そればかりではありません。15節から21節までをご覧ください。

「主は、サウルが来る前の日に、サムエルの耳を開いて告げておられた。「明日の今ごろ、わたしはある人をベニヤミンの地からあなたのところに遣わす。あなたはその人に油を注ぎ、わたしの民イスラエルの君主とせよ。彼はわたしの民をペリシテ人の手から救う。民の叫びがわたしに届き、わたしが自分の民に目を留めたからだ。」サムエルがサウルを見るやいなや、主は彼に告げられた。「さあ、わたしがあなたに話した者だ。この者がわたしの民を支配するのだ。」サウルは、門の中でサムエルに近づいて、言った。「予見者の家はどこですか。教えてください。」サムエルはサウルに答えた。「私が予見者です。私より先に高き所に上りなさい。今日、あなたがたは私と一緒に食事をするのです。明日の朝、私があなたを送ります。あなたの心にあるすべてのことについて、話しましょう。三日前にいなくなったあなたの雌ろばについては、もう気にかけないようにしてください。見つかっていますから。全イスラエルの思いは、だれに向けられているのでしょう。あなたと、あなたの父の全家にではありませんか。」サウルは答えて言った。「私はベニヤミン人で、イスラエルの最も小さい部族の出ではありませんか。私の家族は、ベニヤミンの部族のどの家族よりも、取るに足りないものではありませんか。どうしてこのようなことを私に言われるのですか。」」

 

サムエルは、前もってサウルのことを聞かされていました。「明日の今ごろ、わたしはある人をベニヤミンの地からあなたのところに遣わす。あなたはその人に油を注ぎ、わたしの民イスラエルの君主とせよ。彼はわたしの民をペリシテ人の手から救う。民の叫びがわたしに届き、わたしが自分の民に目を留めたからだ。」と。そして、サムエルがサウルを見るやいなや、主は彼に告げられました。「さあ、わたしがあなたに話した者だ。この者がわたしの民を支配するのだ。」と。

そんなこともいざ知らず、サウルは門の中でサムエルを見つけると、「予見者の家はどこですか。教えてください。」と尋ねました。サムエルは自分がその予見者であることを告げると、いけにえをささげた後で一緒に食事をするようにと誘います。さらに、雌ろばは見つかっていることを告げ、サウルが本当に心配しなければならないことは、全イスラエルのことであると告げるのです。そして、イスラエルの王権は彼に与えられると預言しました。

 

するとサウルは何と答えたでしょうか。彼は驚いてこう言いました。「私はベニヤミン人で、イスラエルの最も小さい部族の出ではありませんか。私の家族は、ベニヤミンの部族のどの家族よりも、取るに足りないものではありませんか。どうしてこのようなことを私に言われるのですか。」

どういうことでしょうか。彼はイスラエル部族の中で最も小さな部族に属しているということ、そして、その部族の中でも一番つまらない者だと言うのです。サウルは非常に謙遜でした。いなくなったろばを捜しに出て、王権を発見したという人は、世界広しと言えども、彼しかいないでしょう。サウルは、最初は謙遜な器でしたが、やがてその性質を失ってしまいます。神は今でも謙遜に、神と人に仕える器を求めておられるのです。

 

Ⅲ.サウルをもてなすサムエル(22-27)

 

最後に22節から27節までを見て終わります。

「サムエルはサウルとそのしもべを広間に連れて来て、三十人ほどの招かれた人たちの上座に着かせた。サムエルは料理人に、「取っておくようにと渡しておいた、ごちそうを出しなさい」と言った。料理人は、もも肉とその上にある部分を取り出し、サウルの前に置いた。サムエルは言った。「これはあなたのために取っておいたものです。あなたの前に置いて、食べてください。その肉は、私が民を招いたと言って、この定められた時のため、あなたのために取り分けておいたものですから。」その日、サウルはサムエルと一緒に食事をした。彼らは高き所から町に下って来た。それからサムエルはサウルと屋上で話をした。彼らは朝早く起きた。夜が明けかかると、サムエルは、屋上にいるサウルに叫んだ。「起きてください。あなたを送りましょう。」サウルは起きて、サムエルと二人で外に出た。二人が町外れへと下っていたとき、サムエルがサウルに「しもべに、私たちより先に行くように言ってください」と言ったので、しもべは先に行った。「あなたは、ここにしばらくとどまってください。神のことばをお聞かせしますから。」」

 

サムエルは、サウルとそのしもべを広間に連れて来て、30人ほどの招かれた人たちの上座に着かせ、最高のもてなしをしました。というより、すでに彼を王になる人として、丁重に接しています。他に招待された人たちの中に彼らを座らせ、上等のももの肉を与えました。これは、サムエルがサウルのためにわざわざ取り分けておいたものです。サウルは破格の扱いを受けました。同席した者たちはさぞ驚いたことでしょう。しかし、一番驚いたのは誰よりもサウル自身であったと思われます。

 

食事が終わると、サムエルとサウルは、ある町の屋上で二人だけで話をしました。おそらくこのときサムエルは、主から受けていた啓示を彼に伝えたことでしょう。そして翌朝早く、サムエルはサウルを起こすと、彼を町外れまで見送りますが、しもべに先に行ってくれるように言ったので、しもべは先に行きました。それでサムエルは神のことばを彼に聞かせました。

 

この時、サムエルはどんな気持ちだったでしょうか。8:6には、このことはサムエルの目には悪しきことでした。これまで自分が必死に主に仕えてきたのに、そのことを認めないで民が勝手に求めた王を今、目の前にして複雑な気持ちだったことでしょう。それなのに、ここにはそんな彼の迷いは微塵も見られません。彼は神のことばをサウルに告げ、彼に油を注いでイスラエルの王とするのです。どこまでも主に忠実なサムエルの姿を見ます。私たちも、自分の目には悪しきことがたくさんあっても、あるいはそれが受け入れられないことでも、そのことにも主の摂理と導きがあると信じて、自分の思いや感情ではなく、主のみこころに歩ませていただきたいと思うのです。